「相続」に関する相談事例

Q1.在日同胞の相続の場合どの国の法律が適用されるのですか?

  日本に住所を有する在日同胞が亡くなり相続が発生した場合、どこの法律によって解決すべきかについては、「法例」という法律が指定した国の民法など(準拠法)によって処理されます。

  ところで、日本の法例の相続に関する規定(第26条)によると、相続は「被相続人の本国法」によって処理すると定められています。 そこで、在日同胞にとって、「本国法」とはどの国の法律かが問題となりますが、朝鮮が分断状態にあるため、南北いずれの法律を適用すべきかを決めることはなかなか難しい問題といえます。

  一部では、外国人登録上の国籍欄が「朝鮮」であれば共和国法が、「韓国」であれば韓国法が適用されると考えられているようですが、これは正確ではありません。 外登上の国籍欄が「韓国」であっても共和国法が適用対象となり得ますし、またその逆の場合もあります。具体的には、本人の住所、財産関係中心地、家族との結びつきなどの客観的要素と、公的生活への参加、その国家への帰属意識(民族団体への所属)などの主観的要素によって判断することになります。

  その上で、本国法が共和国法と判断される場合、共和国対外民事関係法が適用されることになります。 同法の相続に関する規定(第45条)は、海外公民の不動産相続については、不動産所在地法を、動産相続については、被相続人の住所地法を適用すると定めています。 つまり、被相続人が日本に住所を有し、かつその財産も日本にある場合には、日本の民法によって相続が行われることになります。

  このように在日同胞の相続には、共和国、韓国及び日本の法律が関わってきますが、そのことをふまえ、この部分では、できるだけどの国の法律が適用されるかを明らかにしつつ設問にこたえていくことにします。

Q2.在日同胞の相続の場合、法定相続人と法定相続分はどうなっていますか?

  登記実務上、まず共和国法が適用される場合(以下共和国法適用)は日本人の相続と基本的に同じと理解していただいてかまいません(序文参照)。 では、韓国法が適用される場合(以下韓国法適用)はというと、共和国法適用の場合と違う面があるので注意が必要です。

 主な相違点は以下のとおりです。

 1.法定相続人について

  共和国法適用の場合、亡くなった人(被相続人)の子や孫等の直系卑属と親等の直系尊属がいないときには、その配偶者が兄弟姉妹と一緒に同順位の相続人になりますが、韓国法適用の場合は配偶者のみが単独相続人になり、兄弟姉妹は相続人になりません(韓国民法1003条1項)。

  次に被相続人に配偶者がなく直系卑属及び直系尊属もない場合、共和国法適用の場合も韓国法適用の場合も兄弟姉妹が相続人になることに変わりはありません(韓国民法1000条1項、韓国民法1003条1項)。 しかし、その相続開始前に兄弟姉妹が死亡した場合、共和国法適用であれば、兄弟姉妹の子までしか相続できませんが、韓国法適用の場合は兄弟姉妹の孫以下も相続人となります(韓国民法1001条)。

  代襲相続(相続人となるべき直系卑属又は兄弟姉妹が相続開始前に死亡した場合等)の場合、共和国法適用の場合は被相続人と血のつながっていない、相続人となるべき直系卑属又は兄弟姉妹の配偶者はその相続人になりません。 しかし韓国法適用の場合には、相続人となるべき直系卑属又は兄弟姉妹の配偶者は、相続人となるべき直系卑属又は兄弟姉妹の直系卑属と同順位で相続人になり、その相続人がないときは、単独相続人になります(韓国民法1003条2項)。 これは大きな違いであり、知らない人が多く影響も大きいので気をつけてください。

  わかりやすい例でいうと親よりも先に息子が亡くなっている場合、共和国法適用の場合であればその血のつながっている孫が相続人となるのに対し、韓国法適用の場合にはその孫と亡くなった息子の妻も相続人になるということです。


 2.法定相続分について

  共和国法適用の場合と韓国法適用の場合の大きな違いは、配偶者の相続分に表れます。

  韓国法適用の場合には、同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は均分とするとしながらも被相続人の配偶者の相続分は、直系尊属と共同で相続するときは、直系卑属の相続分の5割を加算することとなっています(韓国民法1009条2項)。 この場合直系卑属の相続分の5割を加算する、という意味がわかりにくいのですが、たとえば、子ども一人の持分の5割を加算するという意味です。

  しかし共和国法適用の場合には配偶者が半分、直系卑属が半分です。

  妻と子−甲乙の二人を残して夫が亡くなった場合、共和国法適用の場合は妻2,甲1,乙1の割合ですが、韓国法適用の場合は妻3、甲2、乙2の割合です。

  よって、共和国法適用の場合、子どもの数が多い場合でもその妻の法定持分は半分ですが、韓国法適用の場合、妻の持分は半分より少なくなります。

  相続に適用される法律は相続発生時によって違うので、相続発生時が過去のものについては当時の法律を確認してください。

Q3.日本の司法書士から「朝鮮人の相続には韓国の『戸籍謄本』が必要です」と言われました。 本当でしょうか?

  必ずしも必要ではありません。

  朝鮮表示の在日同胞で戸籍に記載されている人は多くありません。 基本的に1945年の解放前に生まれた在日同胞は植民地時代の戸籍にその記載があります。 解放前日本においては、朝鮮、台湾等の占領地の人間も日本人としましたが、これらの地域からの出身者をいわゆる外地戸籍に編成し、本来の日本人は内地戸籍に編成しました。 よって解放前に日本で生まれた在日同胞は外地戸籍としてその本籍地の戸籍に、その記載がされています。

  法務局や銀行で相続手続きのため、戸籍謄本を要求された場合には、上記のように戸籍にその記載がある人は、誰が相続人かを明らかにする資料の一つとして提出することも考えられます。 もし被相続人の戸籍が明確に韓国にある場合は、相続人の確定のため戸籍謄本等を取り寄せることがあります。 戸籍謄本は本籍地の役所に費用を同封して申請すれば取得できます。

  相続手続きの場合被相続人の出生(少なくとも13歳位)から死亡までのものが必要となります。 ただし、遺言による相続の場合には被相続人の死亡の記載のある戸籍のみで結構です。 そして、この戸籍の翻訳したものを一緒に添付することになります。

  しかし解放後に日本で生まれた朝鮮表示の在日同胞は、共和国が諸外国と同様に戸籍制度をとっていないので、当然戸籍謄本もありません。 相続手続きのために「韓国」の戸籍を新規に作らなければいけないと考えているとしたら、その必要はありません。 

  戸籍のない朝鮮表示の在日同胞は

  @被相続人の外国人登録閉鎖証明書に明らかにできる全ての法定相続人を記載してもらう

  A被相続人の外国人登録済証明書に父母との関係を記載してもらう

  B法定相続人が自分たちしかいない旨の印鑑証明書付きの申述書を作成

  C朝鮮総聯発行の相続証明書の添付

  によって何の問題もなく相続手続きを終わらせることができますので安心してください。

Q4.韓国の戸籍謄本、本籍地について知りたいのですが。

  まず戸籍制度をとり入れている地域と国は、韓国と日本及び台湾のみで、共和国をはじめほとんどの国では戸籍制度はなりません。

  韓国及び日本でとり入れている戸籍は、もともと日本帝国主義時代に導入されたものです。 祖国解放後も韓国で引き継がれた戸籍は、現在一定の家族の構成員について、その各構成員の個人の出生から死亡に至るまでの間の、婚姻、出生等の身分上の事柄を時間的順序に従って記録した公文書として多用され、公簿(戸籍簿)に登録されます。

  戸籍謄本とは、戸籍簿の内容を全部謄写した書面です。

  戸籍には、まず本籍地が書かれ、次に戸主が書かれます。 現在の戸籍では、基本的に家族単位で戸籍が編成されます。

  本籍地とは、基本的に家の所在場所を記載します。 本籍は行政区域、土地の名称及び地名で表示します。 在日同胞の場合の本籍は、その出身地の場合がほとんどです。 なお、一定の手続きを踏めば本適地を他に移すこともできます。







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